短編

腐女子の葛藤


私の好きな彼は、ホモでした。


少し背が低いけど、でもスタイルのいい彼。
かっこいいのに、でもかわいくて。
性格も乱暴なくせに、時折見せる笑顔がとっても好きだ。
けれど実らないと知ってしまった。
昨日のぞいてしまった彼と男友達のキスシーン。
その男友達というのは明るくて、彼より背の高いかっこいい人。
悲しくて、つらくて、どうしようもなくて。

どうしようもないくらいに、切なかったのに。

私の趣味がいけなかった。
私は世に言う”腐女子”というやつで、それはもうドン引きされるくらいの上級者だと自覚している。
だから、そのシーンを見てどうしようもなく萌えてしまった。
可笑しいと思う。萌えているけど、萌えているのに、萌えてしまったけれど、やっぱり私は彼のことが大好きで。
けど美青年同士が実際にあんなことをしている姿を目の前で見てしまったから。
…頭がおかしくなりそうだ。
だって私は彼が大好きで、男友達のことも嫌いじゃないし、ぶっちゃけBL大好きだし。
恐らく彼は男友達のことが好きなのであろう。それは明確であった。
少女漫画みたいに「本当に好きだから譲る」だけでは何かに負ける気がする。
どうするべきなのだろう。このまま自分のために生きるのか。彼のために引くのか。

でもよくよく考えてみると彼に告白せずに二人の間柄を応援しても、私にとってはプラスなのではなかろうか。

だってそうだろう。私は二人の関係性を見つめているだけで楽しい。
でも待とう。少し待とう。
“二人の関係性”だけを見ると確かにそれはそれはこれ以上ないくらいに萌えるが、私の気持ちはどうなってしまうのだ。
私だって彼が好きだ。本当に、それは嘘じゃない。
今だって二人があんなことやそんなことをしてると考えると腸が、煮えくり返りそうなのだ…色々な意味で。
はたして今現在私に渦巻いている感情は萌え?嫉妬?
わからなくて泣いてしまいそうだ。だけど頬が緩んでにやにやするのは、何故。


「…というわけなのだけれど、ねえ、私は貴方達にどう接すればいいと思う?」

「おまえ馬鹿だろ。」
「とりあえず、俺たちを応援するといいと思うぞ。」



2009'07'21
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