短編

無題02


少年が公園へ向かうと、一人の紫色のワンピースを着た少女と出会った。
少年よりも五つか、六つくらい年下だろうか。
少女は少年に飴を差し出し、「御一ついかが?」と聞いてくる。
それを受け取り、袋を開けて口へと放り込むと何とも言えない甘い香りが広がった。
少女の手には色とりどりの飴を入れた袋が見える。
赤や黄色、緑に青。
少年が食べたのは紫で、飴を入れた袋にはもう紫は見えなかった。
「最後の一つだったのよ。」少女は微笑んだ。
少年はどうして彼女が微笑んだのか、どうしても理解できずにいて、口の中の飴を弄んだ。
やがて小さく小さくなった飴は少年の奥歯に噛み砕かれ、潰される。
そして、目の前で紫の少女が潰れて消えた。
少年は眉を顰めてそれを見つめていた。



Copyright(C)2014 aobayashi All rights reserved.  designed by flower&clover